重症化や流行のリスク軽減の予防接種
VACCINATION
予防接種は特定の感染症に対する免疫を事前に獲得し、重症化や流行のリスクを軽減するための重要な手段です。インフルエンザワクチンは、接種後約2週間で効果が現れ、持続期間は約5ヵ月とされています。流行期に備え、12月中旬までの接種をお勧めしております。また、肺炎球菌ワクチンはご高齢者の肺炎予防に有効とされており、接種歴や年齢に応じて適切な対応が必要です。
予防接種とは
予防接種は、感染すると重症化したり、罹患者が急増したりする可能性が高い特定の感染症について、あらかじめ免疫をつける目的で行われます。これにより、当該感染症に感染しにくくなり、万一感染したときでも、軽症で済むという効果が得られます。
なお、予防接種で使用するワクチンは、細菌やウイルスなど病原体の病原性を極限まで弱めるか、無力化させて作られます。これを体内に接種することで免疫がつけられるようになります。当院では、インフルエンザや肺炎球菌などの予防接種を行っています。接種を希望される方は、事前にお電話またはHP / アプリでの予約サイトにてご予約のうえ、指定日時にお越しください。
インフルエンザワクチン
インフルエンザは、インフルエンザウイルスという病原体によって起きる呼吸器感染症です。1~2日間ほどの潜伏期間を経て発症し、38℃以上の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、寒気などの全身症状が現れます。一般的な風邪症候群と同じように、のどの痛み、鼻水、咳などの症状も現れます。高齢者や基礎疾患のある患者さんの場合、病状が悪化して入院治療が必要なることもあります。
インフルエンザの予防対策には、マスク着用、こまめな手洗いなどありますが、最も有効とされているのがインフルエンザワクチンの接種です。このワクチン接種による持続有効期間は約5か月、接種後に効力を発揮するまでに2週間程度の期間を要します。日本では12月~3月頃が流行時期となることが多いので、遅くとも12月中旬頃までには接種されることをお勧めします。
肺炎球菌ワクチン
肺炎による死亡者の9割以上は65歳以上の高齢者といわれています。とくに、肺炎球菌が原因となっているケースがとても多いので、65歳以上の高齢者または60~64歳の方で重度な疾患のある方につきましては定期予防接種となっています。ただし、同ワクチンはすべての高齢者を定期接種の対象にしているわけでなく、23価肺炎球菌ワクチンを一度でも受けた方は対象外となります(定期接種対象外の方でも同ワクチンを全額自己負担で接種することは可能です)。なお、前回の接種から5年を経過していない状態での接種の場合、注射部位に強い痛みが出るようになります。このような状況を避けるには、あらかじめ接種の年月日はきちんと記録しておくようにしてください。
コロナワクチン
従来の生ワクチンや不活化ワクチンとは大きく異なる機序のワクチンが開発されています。
現在、世界で使用され始めているワクチンは、いずれもウイルス抗原の遺伝子を用いたワクチンで、大きくはベクター型と核酸型に分類されます。
ファイザー社やモデルナ社のワクチンは、メッセンジャーRNAという核酸(遺伝子)を人体へ注入することで、体内の細胞にウイルス抗原蛋白を生成させます。よく見るコロナウイルスの周囲のトゲトゲの部分だけを、体の中で安全に大量に作る遺伝子です。これにより人体は、コロナウイルスに実際に感染することなく、コロナウイルスの体の一部の特徴的な形だけを記憶して、抗体免疫を高めることができます。メッセンジャーRNA遺伝子は、不安定な物質のため自然に分解され細胞外へ排泄されます。インフルエンザワクチンのような皮下注射と異なり、筋肉注射で接種を行います。接種回数に関しては2回接種(ファイザー社ワクチンは21日後以降、モデルナ社ワクチンは28日以降)が必要です。1回のみでは効果が不十分とされていますので、必ず2回接種します。また3回以上の接種は、研究データがなく推奨されていません。2回接種の間隔が規定日数開かなかった場合(短縮して接種してしまった場合)には2回目を打ち直しとなります。2回目の間隔が長く開いてしまった場合には問題ありません。1回目と2回目のワクチンは同一のものでなければなりません。
帯状疱疹ワクチン
帯状疱疹ワクチンとは、帯状疱疹の発症や重症化を予防するために、帯状疱疹ウイルスに対する免疫力を高めるワクチンです。水ぼうそうと同じウイルスが原因で、帯状疱疹を発症します。ワクチン接種により、帯状疱疹の発症リスクを減らしたり、発症したとしても症状を軽くしたり、合併症である「帯状疱疹後神経痛」のリスクを減らす効果があります帯状疱疹の発症率は年齢とともに上昇します。50歳を過ぎると増加し始め、60代、70代とさらに高くなっていきます。 また、年齢が上がるにつれて、帯状疱疹後神経痛(PHN)になるリスクも高まります。そのため、帯状疱疹そのものを予防することが重要です。帯状疱疹のワクチン接種は、主に50歳以上の方が対象です。このワクチンは、水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫力を高め、帯状疱疹の発症を予防します。もし発症しても、症状が軽くすむというデータもあります。