便秘は体質ではなく病気です②
2025/07/24
・便秘の治療
前述した便通異常症診療ガイドライン 2023では、便秘症治療のフローチャートが初めて作成されました。
(別図参照)
便秘の治療は、まず生活習慣改善と食事療法を行い、改善がなければ、浸透圧性下剤(マグミットや酸化マグネシウム、アミティーザ、モビコールなど)の投与を行います。腎機能障害を有する高齢者にはマグネシウム製剤 を極力投与しないこと、高齢者へ投与する際は、定期的に血清マグネシウム値を測定することが望ましいとされています。
おそらく漫然と酸化マグネシウムを定期的に内服されている方も多いと思われますので注意が必要です。
ガイドライン 2023では、浸透圧性下剤、 上皮機能変容薬(リンゼス)、胆汁酸トランスポーター阻害薬(グーフィス) が、推奨の強さ:強(合意率 100%),エビデンス レベル:A(質の高いエビデンス)に位置付けられ ていますので、まずはこれらの薬が第一選択となってきます。一方、プ ロバイオティクス(いわゆる整腸剤)、膨張性下剤、消化管運動機能改善薬、漢方薬は、エビデンスが十分でないと判断され現時点では代替・補助治療薬として記載 され、刺激性下剤(センノシド、ラキソベロンなど)や外用薬(坐剤、浣腸)、摘便は、 オンデマンド治療であることが明記されました。なお、オンデマンド治療が頻回になる場合は、治療薬を変更することが望ましいとされています。
つまり、従来の治療では排便困難であった方の排便コントロールとして最も排便の効果として高かった刺激性下剤(市販のコーラックやいわゆるセンナなどもこの部類に当てはまります)は極力使わない方向で治療をしなさいと明記されてしまったわけです。
そのため、これらの治療薬が頻回に使われるような状態であるならばそもそも便秘の治療としては適切ではないため、他の治療薬の併用や追加などをまず検討しなさいという考え方となります。
では、なぜ刺激性下剤を極力使ってはいけないのか?
答えは、刺激性下剤は『依存性』また『耐性』があるからです。
使い始めは、非常にすっきりと大量の排便が出るため、投薬効果の満足度として高い薬になるのですが、頻回の使用で『だんだん効きが悪くなってくる』というような問題点が出てきます。
すると、全体の流れとしては『刺激性下剤を飲むとすっきり出る』→『飲まなきゃ出ない』→『飲んでも出ない』という負のループにはまることが問題視されているわけです。
特に慢性便秘を自覚されている方でこのようなループに陥っている方もいるのではないでしょうか?
当院では、ガイドラインに従って、便秘の方はまず刺激系下剤を使わない便秘薬を第一選択として使用します。
もちろん、一番強力な手駒を使えないという縛りが出てきますので、やはり治療開始時は思ったように排便できなかったり、満足度として低くなることも十分予想されます。
しかしながら、ガイドラインを遵守することはもちろんですが、一番は将来的にいかなる薬を用いても排便が出来なくなるような状態に陥るのを防ぐといった長期的な目標を達成することを第一に考えておりますので、まずは思ったようにうまく治療が進まないことも前提で一歩ずつ課題をクリアしていければと考えております。
・ちなみによくある質問
<食物繊維の摂取>
便秘を解消するために食物繊維を摂取する方法は有名です。食物繊維は善玉菌を増やして腸内環境を健康にするだけでなく、便のカサを増やして腸壁を刺激し、腸の蠕動運動を促進する働きがあると言われています。
ガイドラインでも、食物繊維が不足している人には、便秘解消の効果が期待できるとされています。ただし、推奨度は「弱い推奨」にとどまっており、「過剰摂取は便秘を増悪する」という指摘もあります。食物繊維は摂取量が多いほど良いというものではなく、あくまで“適度に”摂ることが大切なようです。
また、腸のぜん動運動が弱まって便が滞っている状態(大腸通過遅延型便秘)の人は、摂取した食物繊維が詰まって便秘を悪化させてしまう可能性も考え方もあり、腸そのものの機能が弱い方は逆効果になりうることがありますので注意が必要です。
<ビフィズス菌や乳酸菌などを含む食品の摂取>
ビフィズス菌や乳酸菌は、腸内細菌(腸内フローラ)のバランスを整えることで腸内環境を健康に保つ効果があると言われています。特に食物繊維と一緒に摂るのが良いと考えられており、これまで果物とヨーグルトなどを合わせた便秘解消メニューなどが多く紹介されてきました。
さらに言うと、腸内細菌は糖質を栄養源にして増殖することもあり、菌体だけではなく併せて糖質もしっかり摂取しなければなかなか腸内細菌を増やしていけません。
ビフィズス菌や乳酸菌のように、人体に良い影響を与える微生物のことをプロバイオティクスと言います。ガイドラインでは、プロバイオティクスの便秘解消効果についても触れられており、これらの摂取は便秘対策の一つとして挙げられています。しかし、推奨度については、エビデンスが十分でないことを理由に「弱い推奨」にとどまっているようです。
少し長くなってしまいましたが、便秘という一つの病態だけであってもこれだけ分類や治療法の変遷が行われてきている重大な病気の一つだと考えています。
たかが便秘とは思わずに、気になる方は是非一度ご相談に来てください。
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